きくな湯田眼科

涙の排泄

主として涙腺で産生された涙は10%程度が蒸発で失われますが、大半は上下の眼瞼鼻側にある涙点より涙嚢へと吸引されます(図1)。この時にまばたきが重要で、特に閉瞼時の眼輪筋の一部で涙小管周囲にあるホルネル筋の収縮が重要となります(図2)。

涙道内視鏡図1図2

涙嚢に涙液が吸引される事象の説明には2つの説があります。>一つは、ホルネル筋の収縮により涙小管内にある涙液が涙嚢へ押し出され、同時に涙嚢が外側上方に引き上げられることにより涙嚢腔の容積が大きくなり陰圧が生じ涙液が涙嚢へ吸引されるという説です。開瞼時には涙嚢は収縮し、重力で涙液は鼻涙管へと流れ、涙小管へはサイフォン効果で結膜側から涙液が流れ込むということになります。もう一つは、閉瞼時に眼瞼により涙点が閉塞されることで涙小管が閉じ、涙小管・涙嚢は収縮し、涙嚢内の涙液が鼻涙管へ押し出されるという説です(図3)。先の説とは正反対でこの場合は涙嚢圧が閉瞼時に陽圧になると言うことになります。開瞼時には涙小管が拡張することで陰圧が生じ、涙点が開放されると同時に涙液は涙小管に吸引されることになります(図4)。

涙道内視鏡図3図4

涙をためる涙嚢は基底細胞層と表層円柱細胞層の2重層構造をもつ上皮により腔が形成され、周囲を血流の豊富な海綿状組織が取り巻いています(図5)。上皮にはゴブレット細胞が見られ、ムチン、ペプチドなどを産生しており、これらの成分は涙液の動態を良好に保つ効果や感染防止、損傷の修復といった涙道の保護のための多様な効果をもっています(図6)。

涙道内視鏡図5図6

涙嚢から鼻涙管に至る上皮周囲を取り囲む結合織は、主としてタイプ?とタイプ?コラーゲン線維から成り、これらがらせん状に配列し、スクリューのように作用し、涙液の鼻腔への流れを起こすのに役立っています(図7)。周囲を骨に取り囲まれた鼻涙管はやはり周囲を海綿状組織が取り巻いています。海綿状組織は動脈と静脈が吻合した血流豊富な組織で、涙液の流れをコントロールしています(図8)。

涙道内視鏡図7図8

海綿状組織には多くの神経ペプチドを放出する神経終末が見られ、これらの神経ペプチドが海綿状組織の血流を変化させ、最終的に涙液の動態を調節していることになります(図9)。

鼻涙管は導管としての役割以外に、涙液の吸収作用もあることが分かってきました。鼻涙管で継続的に吸収された涙液は海綿状組織に流れ、この流れが涙腺での涙液産生をフィードバック制御していると考えられています(図10)。鼻涙管での涙液吸収が低下すると、涙腺に働き、涙液の産生をストップするということです。これが涙道機能不全からドライアイを生ずるメカニズムであろうと想定されています。

涙道内視鏡図9図10

涙道閉塞は結膜や鼻粘膜の炎症が波及することにより起こります。初めは海綿状組織のうっ血、ゴブレット細胞や涙嚢・鼻涙管上皮組織からのムチン、ぺプチドなどの過剰生産などから、機能的な通過障害を起こします。やがて炎症が長引くと上皮組織に形態的な変化が生じます。上皮層からゴブレット細胞が消失、炎症細胞が上皮下に浸潤し、線維芽細胞が出現し結合織を産生し始めます(図11)。やがて上皮は粘膜上皮から扁平上皮へ変化(扁平上皮化生)、細胞基底膜は肥厚し、上皮下組織は線維化し、海綿状組織も消滅してしまい、永久的な鼻涙管閉塞へ進行していきます(図12)。
涙道内視鏡検査は涙道の様子を直接見ることのできる唯一の方法です。涙道の様子を知ることにより、治療の方法を選択することが可能です(図13)。

涙道内視鏡図11図12

涙道内視鏡図1

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